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第138話 Rose Houseの実態①

Author: 霞花怜
last update Last Updated: 2025-09-05 19:00:46

 呪いの研究室の半地下を確認した直後、理玖たちはすぐに福澤理事長に報告を行った。

 業平の手配で呪いの研究室と半地下の防空壕は閉鎖となった。

 開かなかった防空壕が偶然、見つかったとの触れ込みから、考古学と歴史学、地質学の教授を入れて大規模な発掘調査を組むつもりらしい。

 大学が打った最大の立ち入り禁止の名目だ。

 流石は福澤理事長だと理玖は感心した。

「かくれんぼサークルは顧問の折笠先生が重傷で倒れたのを理由に、廃部が決まりました。これでDollは確実に活動拠点を失いましたね」

 つまりDollは事実上、解体された。

 とはいえ、諸手を上げて喜べる内容でもない。

「臥龍岡先生の狙い通り、Dollが潰れた。RISEが積極的に動き出すね」

 RISEが狙う実験。

 rulerのspouseになった特別なotherが、その他大勢のonlyを妊娠させられるかの実験が始まる。

「理玖さん、ずっと気になっていることがあるんですが」

 晴翔が珍しく俯きがちに理玖に問い掛けた。

「折笠先生が臥龍岡先生を本気で愛していたって、USBに入っていた理玖さん宛の手紙を読んで、俺もそんな気がしています。だけど、臥龍岡先生はどうなんでしょう。折笠先生を好きだったのかな」

 俯く晴翔を眺めながら、理玖は以前に立てた自分の仮説を思い返した。

『Rose Houseの従順な下僕、臥龍岡叶大は薔薇の園の命令で折笠悟を愛し、殺した』

 そう考えるのが最もスマートだ。

 意志を殺した人形の価値観は総て、薔薇の園の意志である。

(本当にそうだろうか。臥龍岡先生は折笠先生を、積木莉汐を、どう思っていたのだろう)

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